第45回 例会 「大豆の魅力を科学する!」
平成12年1月23日(日) 城西中にて
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担当 佐賀大学 科学部 E-mail
isaac99@d1.dion.ne.jp
〒840-8502 佐賀市本庄町1番地 佐賀大学
第一サークル会館2F 共同204号室 科学部 行
科学部ホームページ http://www.d1.dion.ne.jp/~isaac99http://www.d1.dion.ne.jp/~isaac99
* 本書は佐賀大学 科学部が製作したものです。本書の内容にはインターネットのホームページ等から許可を得てそのまま転載した部分が含まれています。そのため本書を複写または転載する場合にはその点に留意して下さい。
なお参考にしたホームページのアドレスは以下の通りです。
http://www.tk.xaxon.ne.jp/~ebisuya/intro.html 恵比寿屋商店
通常では“豆腐”と書きますが恵比寿屋商店では“豆富”と書いています。そのため本書でも出来る限り原文のままの文章で作成しています。
絹ごし豆腐の作り方
大豆を水に浸けます。季節によって浸ける時間が違います。冬場で20時間・夏場で8時間ぐらいです。
大豆を、水と一緒に石臼で磨りつぶします。この時の水の割合で豆乳の濃さが決まります。
磨りつぶした物を、呉と言います。 呉を煮ます。
煮立ったら、目の細かい布で呉を絞ります。絞り出た汁が、豆乳です。絞りかすが、おからです。
豆乳に、にがりを混ぜます。混ぜる時の力加減が、豆腐の味が決まる大事なところです。固まったら、型から取りだして出来上がりです。
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油揚げの作り方
油揚げ用に作った豆腐を、薄く切りすだれで上と下から押し水分を、抜きます。
油揚げの生地を、初めはぬるい油で、生地を延ばします。
大きくなったら、熱い油で揚げます。右の写真は、揚げているところです。左は、ぬるい油・右は、熱い油です。
両面揚げて出来上がりです。
あなたも豆富造りに、挑戦してみよう!!
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@大豆をよく洗う。2度洗いする。
1度目はざっと洗い、2度目は大豆を手の平で握る様にする。
そうすると大豆の皮が取れる。大豆の皮はおいしくないので、
浮いてきたら、きれいに取って捨てる。
A大豆を水に漬ける。 漬ける時間は、夏季で(気温20度以上)で8〜9
時間位冬季で(気温20度以下)20時間位漬かり過ぎると水の表面に
泡が浮いてきます。"大豆蛋白"が水に出ている証拠です。
B漬かった大豆を"ざる"に空け水を切る。ミキサ−にかけ大豆を粉砕する。
"どろどろ状態"までにする。(それを"呉"と言う)
CBで出来た"呉"を鍋にうつして煮る。
沸騰するまで煮てから、その"呉"をあらかじめ用意しておいた布袋に空け
"おから"と"豆乳"に分ける。(この時、熱いですが、よく絞って下さい)
DCで出来た"豆乳を鍋に移し煮る。(68〜72度位まで)
高温まで計れる温度計があれば良いのですがない場合は、
豆乳に指を入れて、5秒位入れてられる状態まで煮る。
Eさて、いよいよ、豆乳を寄せて豆富にするのですが
"寄せ粉"の種類も色々ありますので、詳しくは、"寄せ粉"を分けて頂いた
"豆富屋"さんに、に聞いて下さい。
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☆出来上がった"豆富"が柔らかい場合
(ヨ−グルト状態の時)
@豆乳の濃度が薄い(煮る時の、水の量が多い。)
A豆乳を煮る温度が低い。
B"にがり"の量が少ない。
☆出来上がった"豆富"が固い場合
("ぽろぽろ"したり"す"が入っている状態)
@豆乳の濃度が濃い。(煮る時の、水の量が少ない。)
A豆乳を煮る温度が高い。
B"にがり"の量が多い。
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☆"豆富屋"がおしえるおいしい"豆富"の召し上がりか方!!
@なるべく信用のおける豆富屋で購入する。豆富屋が近所にない
場合は、近所の"ス−パ−" でいいから、
ある程度の品質の商品を購入する。
Aお買い上げになった豆富を容器(パック)よりボ−ル等に移し
たっぷりのお水の中に入れ, 2〜3時間冷蔵庫に入れ、
豆富の"あく"(水が黄色くなるそれが"あく"です)を抜く。
B充分"あく"が抜けたら、豆富を水でざっと流し、お皿に移し薬味を
添えて召し上がる。そうすれば、今までと
ひと味違う”冷や奴”が いただけますヨ。!!
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☆パック豆富は長い間、パックに入っていて、水が変わらない
ので特によく"あく"を抜く事
そうすればかなりおいしい"豆富"が召し上がれますヨ。!!
近頃ちょっと気が付いた事!!
@近頃お豆富をお買い上げ下さるお客様でよく受ける質問は、
"貴店のお豆富は湯通ししなくて食べられますか?"とか、
"生で食べても、だいじょうぶですか?"という質問です。
他店の事は、わかりませんが、ご心配無く
当店の豆富は、湯通しもしなくても、生で召し上がって
頂いてだいじょうぶです。!!!
☆尚、当店では、湯通ししなくては召し上がれない豆腐は、豆富と
考えていません。
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Aこう暑くなってくると"このお豆富は今日中に食べなければ
だめですか?"という質問をよく受けます
回答としては、お客様の管理しだいでは、
2日間位は日持ちするとは思いますが、味は確実に落ちます。
面倒だとは思いますが、今日召し上がる分は、
今日お買い上げ頂くようお願い致します。
尚、苦言を申し上げさせて頂ければ、生ものが何日も日持ち
する事自体、おかしいのでは、ないでしょうか!!!
健康と美容のために一日一丁の豆腐を。
高血圧、動脈硬化予防に大豆のタンパク質は、体にとても良いそうです。
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7月1日更新
動脈硬化が心配な方に油揚げでこんな食べ方があります。
油揚げを(手揚げ)軽く火であぶり食べやすい大きさに切ります。
切った油揚げを皿にのせて大根おろしを入れます。
醤油をかけて出来上がりです。ポン酢醤油やレモン汁を入れても良いと思います。
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6月27日更新
東京では、30度を超える日もあって冷奴の季節になってしました。
冷奴は、豆腐の味が一番わかり簡単に出来る食べ方だと思います。
お好みにより、おろした生姜やネギを(少量)添えると良いと思います。
他には、オクラと鰹節をのせ醤油の代わりに青じそドレッシングをかけ食べるとさっぱりして美味しいです。
栃木家の商品に「おぼろ豆腐」が有ります。これが暑い日には、よく売れます。
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6月17日更新
私は、豆腐は作れるのですが、料理が上手くないので細かく説明できませんので、勘弁して下さい。
生揚げカレー
先に言ってしまえば、カレーに入れる肉の替わりに生揚げを入れます。
生揚げの大きさは、縦2等分に切り、横2p位に揃えます。
後は、カレーを作る要領で。(かくし味に、うどんに使うめんつゆを入れると良いと思います。)
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豆腐サラダ
作り方は、至って簡単
まず自分の好みの野菜サラダを、作ります。
その上に豆腐を、手で適当な大きさに、ちぎってのせます。
これで出来上がり。
個人的に、豆腐は木綿・ドレッシングは、あまり油ぽっくないものが良いと思います。
油揚げのちょと変わった食べ方
いなり寿司の皮を、作ります。上手く出来ない人は、豆腐屋で、裂いたのを買って下さい。油揚げの中に好みの量のチーズを、入れます。長ネギを、刻んで入れても良いと思います。串で口を塞ぎ、網を使って軽くあぶります。
油揚げが、カリカリになったら皿にのせ生姜と醤油をかけ出来上がり。(つまみに最高)油揚げは、穴の開いてない物を使いましょう。(穴からチーズが溶けて出てしまうため)その他チーズの替わりに、納豆を入れても美味しいです。
湯豆腐と大根おろし
鍋に昆布と水を入れ煮立たせて出汁を作ります。
出汁が出来たら豆腐を入れ好みにより鱈などを入れます。ここまでは、普通の湯豆腐です。火を弱火にして、鍋に大根おろしを入れます。沸騰させないで下さい。これで出来上がり。
後は、豆腐と大根おろしを一緒によそって醤油やポン酢を垂らして食べて下さい。豆腐の味を損なわないため、豆腐を熱くせずぬる目位が良いと思います。
一言、見た目は、あまり良くないです。
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豆腐雑学/Knowledge
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1.日本人と豆腐
しょうゆ、みそ、豆腐、揚げ、納豆、食用油・・・・・大豆がらできた食品は、日本の食生活の歴史そのものともいえるくらい、日本人と深いつながりを持っています。古来より、魚以外から動物性タンパク質を摂る機会の少なかった日本人にとって、畑の肉と言われる大豆はそれを補う良質の植物性タンパク質の供給源として、さまざまに加工・利用されてきました。その代表ともいえる食品が豆腐です。近年、生活習慣病(成人病)が増加傾向にある中で、低カロリーかつ高蛋白の優れた健康食として豆腐は日本のみならず世界中で脚光を浴びています。
2.豆腐の起源
大豆の加工製品の中で、豆腐は最も多く食され、栄養価も高く、昔から日本人の食生活には欠かせない食品でした。これほど身近な食品であるにもかかわらず、その起源ははっきりとしていません。しかし多くの日本文化の起源がそうであるように、豆腐も元は中国で作られ、はるばる海を渡って日本にやって来たと考えられています。
中国で初めて豆腐が作られたのは、一説には、今から2千年余も前、漢の時代に准南王劉安(わいなんおうりゅうあん)によって創案されたとも言われています。しかし、実際に文献などに”豆腐”という文字が登場するのは、約1千年前、宋代の初期に書かれた『清異録』という書物が最初で、それ以前の六世紀の農書・料埋書として知られている『斉民要術』にも豆腐の記述はありませんでした。
3.豆腐という文字の由来
日本人からすると、豆腐と納豆は逆のような気もしますが、実はそうではありません。
中国ではヨーグルトのことを「乳腐」と言います。このように中国では「腐」という文字は「くさる」という意味ではなく、「固まる」とか「柔かい固体」を意味します。従って豆腐も、「豆を固めたもの」といったところですね。
中国の豆腐は日本の豆腐と違って、固めで水分が少く、塩気も強いのです。中国では豆腐をそのまま食べることはなく、油と合わせて煮たり、炒めたりします。日本では沖繩の豆腐が、これによく似ています。
4.豆腐の伝来
日本に豆腐が伝えられたのは奈良時代と言われています。
6世紀にはじめて仏教が伝来して以来、7世紀から8世紀の奈良時代にかけて大陸との交流がますます盛んになりました。従って仏教の伝来と豆腐は密接なつながりを持っていたであろうことは容易に想像できます。しかし長い間豆腐は、借侶や貴族階級など特権階級のごく少数の人達が食していただけでした。日本での、豆腐に関する最古の文献は、1183年の奈良春日大社の記録です。鎌倉時代の後半に書かれた日蓮の書簡には「すり豆腐」という言葉があります。また、南北朝時代から室町時代にかけては、寺院の記録の中に、豆腐に関するものが急激に増えてきます。このことから豆腐は精進料理には無くてはならないものだったわけです。
5.庶民への普及
茶道の広まりとともに神社仏閣の精進料理が一般にも浸透しはじめ、室町時代以降には庶民も目にするようになりました。室町時代も終わり頃には、豆腐売りのことや、奈良豆腐、宇治豆腐などという記述が、『七十一番職人尽歌合』という本に見ることができます。各地に特産の豆腐があったことがしのぱれますが、次第に水のよい京都でさかんに作られるようになりました。江戸時代に入ると、大阪の高津豆腐、江戸の錦豆腐などが知られるようになりましたが、慶長年間(1596〜1615)には、京都祗園社境内の二軒茶屋が、祗園豆腐と称する田楽を売り出したところ好評だったため、これ以後、続々と豆腐科理屋が出現しました。中でも滋賀・目川稲荷の田楽、南禅寺の湯豆腐、江戸両国のあわ雪などが有名でした。
6.豆腐百珍
まんがやテレビの「美味しんぼ」の中にも出てきた『豆腐百珍』は、江戸時代の天明2年(1782年)に出版された、大阪の醒狂道人何必醇(すいきょうどうにんかひつじゅん)によって編集された豆腐料理の本です。実に230種以上にも及ぶ豆腐料理が紹介されています。大変売れ行きが良かったらしく当時のベストセラーでしたが、日本料理の古典書としても定評のあるものです。続編もあることから、当時から多様な豆腐料理が作られ、豆腐が庶民の食生活にはなくてはならない食材であったことがわかります。
7.近年の豆腐
このように豆腐は長い年月と伝統に培われて育ってきました。近年では原料は輸入大豆が中心ですが、製造技術の向上によりとても美味しい豆腐ができるようになりました。また最近のグルメブームを反映して上質の国産大豆を使用した豆腐など多様な豆腐に出会うことができます。
日本人にとってはやはり、冷や奴や湯豆腐のようにあるがままの素材を味わうのが最高ですが、淡白で加工しやすいという利点を活かして新しい美味しさを追求していくのも良いのではないでしょうか。
8.奴の語源
ところで皆さん、冷や奴の「奴」とはどういう意味かご存知ですか?
奴とは日本料理における切り方の名称で、大きめの正立方体に切ることを「奴に切る」というような言い方をします。その語源は、江戸時代、武家につかえていた奴さんの衣裳の紋に由来するといわれています。
ちなみに、奴をさらに小さくした立方体(1cm角)を賽(さい)の目、さらにもうひとまわり小さいもの(5mm角)を霰(あられ)と言い、用途によって使い分けます。
9.ワンポイント英語
英語で「豆腐」は何と呼ばれているのでしょうか?
味噌は"miso"または"bean paste"で、醤油は"soy"または"soy sause"ですね。
さて「豆腐」は・・・「豆腐」は"tofu"です。
実はそのままです。
"tofu"は今や世界共通語になりました。
では「油揚げ」はどうなるのでしょうか?
揚げを"age"と書くとエイジ(年齢)のことになってしまいます。
揚げは"fried tofu"のことですが、"fried bean curd"と言います。
厚揚げは"thick fried bean curd"ってとこですか。
"fry"(揚げる)と"fly"(飛ぶ)の発音に注意してくださいね。
でないと"flied tofu"(飛んだ豆腐)になってしまいますよ!
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豆腐を科学する Science of tofu.
低カロリー&高タンパクの優れた食品
近年、日本の食生活も欧米化が進み、動物性のタンパク質や脂質の摂取量が多くなりました。それに伴い糖尿病、動脈硬化性疾患、高血圧症などの生活習慣病(最近まで成人病と呼ばれていました)が増加しています。そのような状況で、豆腐は低カロリーかつ高蛋白の優れた健康食として日本のみならず世界中で脚光を浴びています。そこで普段あまり知ることのない豆腐について少しだけ科学してみましょう。
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1.豆腐の製法
大豆は栄養価の高い食料ですが、単に加熱しただけでは消化がよくありません。太古の人々は経験的に豆乳の形が消化されやすいことを知っており、塩で調味したところ昔の塩は苦汁(にがり)を多量に含んでいたため豆乳が凝固したことが、現在の豆腐の原形となったのではないかと考えられます。
2.豆腐関連の食材
豆腐はその製造過程で豆乳・湯葉・おからなどができますし、豆腐自体のくせのない味や自由に形を変えられることから多くの加工品が作られます。
3.大豆や豆腐の成分
豆腐や揚げの材料である大豆は古くから「畑の肉」と賞されているほど蛋白質や脂質が豊富です。これは他の穀物とはまったく比べものになりません。
大豆と他食品との成分比較グラフ
植物性脂肪中に多く含まれるリノール酸などの不飽和脂肪酸やリン脂質である大豆レシチンは血液中にある悪玉コレステロールを下げ善玉(HDL)コレステロールを増やす働きがあり、動脈硬化などの生活習慣病(成人病)予防に良いといわれています。また腸をきれいにする食物繊維、カルシウム(骨粗鬆症の防止)、リン、鉄(貧血防止)などのミネラル群や、お肌の新陳代謝を促進し若々しく保つB1・B2・Eなどのビタミン群も含まれています。
また、アルコールに対する肝機能の衰え、消化が良いので病中病後の食事、肥満防上のダイットフードにも・・・と、豆腐はまさに高タンパク・低カロリーの理想的な食品です。
この高タンパク・低カロリー食品を世界の人が見逃しておくわけがありません。「TOFU」は、今やりっぱな世界共通語。地球のあちらこちらで販売され、ヘルシーフードとして高い評価を受けています。
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食欲のない暑い時にツルッとした口当たりがうれしい冷双、寒い冬の晩にフーフーいいながら食べる湯豆腐などもいいものですが、食ベ方にもアイデアいっぱいのものが続々と誕生し、これまでの既成概念だけではとらえきれない大きな可能性を秘めているのも、豆腐の魅カと言えるでしょう。
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お豆富のうんちく、あれこれ!
お豆富の歴史
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第一章 序 章(いつどこで、誰が造り始めたのか?) Updeted 97/05/11
第二章 日本伝来について(いつ頃誰が伝えたのか?) Updeted97/06/08
第三章 豆富に関する諺(ことわざ)、いろいろ Updeted97/06/08
第四章 豆富と水の結びつき Updeted97/07/06
第五章 京都と江戸の豆腐比較論 Updeted97/08/03
第六章 豆腐の加工品 Updeted97/09/07
第七章 豆腐の名物料理 Updeted97/10/05
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本書では第二〜五章は省略しています。ご覧になりたい方はホームページのほうを見られるか、
科学部までご連絡下さい。
第一章 序章(いつどこで、誰が造り始めたのか?)
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「日本うまいもの辞典」 近藤 弘著 ◎東京堂出版より抜粋
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◎基礎知識
☆我が国、日本では醤油、味噌、納豆と並んで豆腐は、大豆を使った四代食文化である。
東北アジアの大豆農耕圏の中で、日本列島のみが四種類の大豆文化を持つ。
☆大豆の蛋白質(グロブリンの一種、グリシニン。含疏アミノ酸がやや不足しているが
"アミノ酸組成"は、牛乳の"蛋白質カゼイン"に似ていて、質的にきわめてすぐれている)
を熱湯で取り出し、ニガリ(塩化マグネシウム)、澄まし粉(硫酸カルシウム)などの
凝固剤を加えて、抽出した大豆蛋白質を凝固(固まらせること)させた製品が豆腐。
つまり製造法的に見ると、きわめて科学的な食品である。
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◎豆腐の歴史
☆製法がきわめて科学的な豆腐。
何がきっかけで発明されたものか調べてみる。
☆一般には、豆腐は漢の"准南王劉安"(ワイナンオウリセウアン)の発明と
いわれてきた。
"劉安"(リセウアン)は漢の高祖の孫、学問を好み、哲学書「准南子」(エナンジ)は、
彼が幕僚たちとの討論をまとめた書と伝えている。彼はのちに横死する。
彼の才を惜しんでのゆえか、薄幸を惜しんでのゆえか、中国でも豆腐の発明者は
"劉安"(リセウアン)との意見も強い。豆腐には"准南遺品"(ワイナンイヒン)などの
別名がある。
☆しかし、農学書、料理番として名高い六世紀、北魏時代「斉民要術」の大豆の章にも、
農産加工の章にも、豆腐の名は見当たらない。
「豆腐の名がいつ出るか随分調べました。五代末から宗初期にかけての人、
陶殻の書"清異録"が初見です。」と、篠田統先生(生化学・民族学・すしの研究者と
としても著名な方。元大阪学芸大教授、故人)
☆中国大陸で"腐"とは、固体でもなく、液体でもなく、脳味噌のような、
コロイド状のものをさす。
そこで"腐系"の食物の登場に注目してみる。唐代の詩人、"白楽天"はその晩年に、
"粥"に"酪奬"(今でいえばヨ−グルト)をかけて食べている。
☆唐王朝は、もともと北方の出身である上、"安禄山の乱"で、蒙古族、満州族との
接触も繁くなる。遊牧民族と接した唐代の人々は、当然、乳製品に親しむ。
彼ら漢民族は馬乳・牛乳、を発酵の働きで凝固させたもの、今のチ−ズに近いものを
"乳腐"と名づけた。"乳腐"に比べて水分の多いものが"酪奬"。
"奬"とは、「おもゆ状のもの」の意味をもつ。
☆"乳腐"、つまり"腐系"の食品に気づいた唐代の人々は、豆腐を使い"腐系"の食品
即ち"豆腐"を作ろうと努力したことだろう。
事実、中国大陸では大豆を材料とした"臭豆腐"のような発酵食品を数多く
作り上げている。
「私も豆腐の発明は、唐代の中ごろ、八〜九世紀ごろと考えています。」
と、篠田統博士。
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第六章 豆腐の加工品
「日本うまいもの辞典」 近藤 弘著 ◎東京堂出版より抜粋
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☆加工の仕方で分類してみる。
@直火で加工するもの。 (例・焼豆腐、ちくわ豆腐)
A油で揚げるもの。 (例・油揚、厚揚、ひりゅうず〔ひろうず、俗に言うがんもどき])
B乾燥品 (例・高野豆腐〔凍み豆腐〕、六条豆腐)
C特殊な加工品。 (例・ギセ豆腐)
D微生物を使った加工品 (例・豆腐よう)
Eおから
以上の加工品のうち、"ギセ豆腐"と"豆腐よう"と"六条豆腐"の作り方を説明しておく。
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☆ギセ豆腐
"擬製豆腐"と書く。京都の精進料理に登場する豆腐の加工品である。
ゆでた豆腐をしぼり、調味してのち、調味した人参、木茸、青豆、麻の実などを加え、
つなぎに生卵を入れて良くかきまぜて蒸しあげてつくる。
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☆六条豆腐
現在では、修験道で名高い"出羽三山"の、その一つ羽黒山に近い店で
一軒だけ造っている。"飴色"というか、"べっ甲色"というか、半透明のすばらしく固い豆腐。
はじめ塩を振って豆腐の水分を除き、継ぎに日に干しあげて乾燥する、と伝えている。
"羽黒山伏"が"峯歩き"の折りの"携行食品"の一つ。今、私たちは、"カンナ"か"小刀"
で薄くけずり、"吸物"の具などに使うが、その昔、修験者たちは、薄くけずり、
水にひたしでもして、"峯歩き"のおりの食料は、修験者にとっては最高の"口伝"
(口伝えの記録。文字には決して記さない。芭蕉も「惣而此(ソウジテコノ〉
山中の微細(ミサイ〉、行者の法式(ハフシキ〉として他言することを禁ず。
よりて筆をとどめて記さず」と『奥の細道』羽黒山の項に記す)。
"六条豆腐"を修験者たちが、どう食べたものか、今では、その"口伝"も絶えた。
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☆豆腐よう
◎沖縄独特の加工品である。
豆腐を三センチ角ほどに切り、
@そのまま蒸すか、塩をまぶして蒸す。
A蒸した豆腐を目の荒い"ミ−ジョ−キ−"(平らなザル)に広げて陰干しする。
冬は二〜三日夏は四〜五日。箸で裏返しながら乾してゆくと、
表面がねばねばしてきて、色は褐色に変わってくる。
「こころところが大切なの。豆腐を腐らせては駄目。お箸もザルもきれいに洗って、
充分に日に干したものを使います。」と"与那嶺カナ"さん(花ずみのおかみ
那覇料理の名手だった。故人)
B粘りの出てきた豆腐は"泡盛"で粘りっ気のとれるまで幾度も洗い(夏は特に幾度も洗う
「泡盛はちょっと温めておいたものを使う。」と、カナさん。
C洗った豆腐を「もち米、泡盛、中国産の紅麹をまぜ合わせ、こうじが柔らかくなったころ、
すり鉢で、丁寧にすりつぶし、塩と少々の砂糖で味付けした中に、泡盛で洗った豆腐
Bを入れて漬け込むの。」とカナさん。器は、カメかガラスびん。栓をして密閉して熟成
させる。「夏なら二ヶ月、冬なら三ヶ月で馴れます。半年目ぐらいが食べごろね。」
とカナさん
"台湾"では、長期間味噌に漬け込み、"クモノスカビ"か何かを繁殖させた
発酵豆腐があった。濃い褐色をしていて、固さはチ−ズに近く、貴重な食物だった。
その味わいを今でも覚えているが、カナさんの豆腐ようは、淡い甘さで、
泡盛の香りと味わいに紅麹の発酵した味わいが加わり、豆腐加工品の傑作中の
傑作だった。そのころ「ほんとうの豆腐ようを作れる人は、少なくなりました。」と
カナさんの話だった。
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第七章 豆腐の名物料理
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「日本うまいもの辞典」 近藤 弘著 ◎東京堂出版より抜粋
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◎豆腐祭の豆腐料理
☆山形県東田川郡櫛引村の"王祗祭"(二月一日から二日にかけて、夜を徹して行われる)
で、文字どうり夜を徹して行われる演能は、"黒川能"(国指定無形文化財)の名で世に
通っている。この祭、別名を"豆腐祭"と呼ぶ。祭の10日前(一月20日)には豆腐あぶりが
始まる。大豆にして10俵ほどの豆腐を作り、杉串に刺した1万3000本ほどの豆腐を
3日間、大きな炉であぶり続けて、焼豆腐をつくる。
@作った焼豆腐、行きの上にひろげて凍らせて、凍豆腐を作る。
A祭の当日、八升炊きの大鍋をいくつも並べ、凍み豆腐を放り込み上座(祭は、村を
上座、下座に分けて行う)では、味噌味で煮て、二番汁をつけて食べる。
B下座では、前もって塩煮しておいた凍豆腐に、熱い二番汁をつけて食べる。ここでいう
二番汁とは、山椒の香りの強い醤油汁である。
☆夜を徹しての黒川能演能の中休みに、役者衆は舞台で食事をとるが、その食事のメニュ−
の主役が、上述の豆腐料理。演能の夜、村人たちも役者衆も一晩で一万3000〜4000
本の豆腐田楽料理を食べてしまう。大鍋の中には、たばねて入れた、と感ずるほどに
牛蒡を入れる。「ダシのようなものダス。」と村人が教えてくれた。大鍋の生んだ独特な味
それが豆腐祭の豆腐料理である。味噌味、塩味が浸みて、ゴボウの味と香りの生きた
凍焼豆腐の独特の味わいと二番汁の山椒の香りがまことによく似合う豆腐料理である
これほど多量の豆腐料理作りは、日本列島で他に類がない。
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◎土佐の湯豆腐
☆「豆腐を一丁ごとに大きな鍋に入れて煮いますろ。煮いたらふくれて浮き上がって
きますろ。それをとり出しておいて、タイ、イトヨリなど焼いた身をすり鉢でよくすって、
醤油を入れて混ぜて、タレにして豆腐にかけて食べました。うまいもんでごわした。
湯豆腐と言いました。」と川村源七先生(民族学・郷土史研究者。元高知県立図書館長
故人)明治40年(1908)前後まで、土佐で湯豆腐といえば、そんなイゴッソウな湯豆腐
だった。もちろん冬の料理。大鍋料理である。「1丁5銭でごわした。」と川村源七先生
土佐流湯豆腐を再現してみたが、確かにうまい。
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◎沖縄の豆腐料理
☆チャンプル
沖縄を代表する家庭料理の一つ。強火で熱した支那鍋にラ−ドを入れ、水気を切った
豆腐を手で握りつぶすような感じでちぎって鍋に入れ、表面が狐色に変わる程度に
いため、かつお節、塩でうす味をつけ、その中にモヤシを放り込んで手早くいため、
少々の醤油で味を整えれば、"マ−ミナ(豆の菜の意味)・チャンプル−"。
薄切りにしたゴ−ヤ−(にがうり)を入れれば"ゴ−ヤ−.チャンプル−"。
チリピラ(ニラ)を入れれば"チリピラ・チャンプラ−"。
「チャ−ラナイ・イリなさい(ジャツ、ジャツと炒って仕上げるのがコツ。」と与那嶺カナさん
("花ずみ"のおかみ。那覇料理の名手だった。故人)チャンプル−は、熱いうちに食べる
料理。かつお節の代わりに豚肉をサイコロ切りにして入れてもうまい。
中国の豆腐料理は日本人にもなじみの深い"麻婆(マ−ボ−)豆腐"のように、"腐"の
味わいを楽しむものが多いが、"チャンプル−"は中国大陸の"腐系料理"である。
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☆ンスナバ−・ンプシ−
「ここ(沖縄)では、豆腐(または豚肉)と季節の野菜を、豚のダシと味噌で煮込んだ料理を
ンプシ−と言います。」と与那嶺カナさん。
@豆腐は丸ごと水洗いして水を切っておく。
Aンスナバ−(ふだん草)は、ゆでておく。
B鍋に豚だしと赤味噌を入れ、火にかけて煮たってきたら、
Cふだん草と、手っで大きくちぎった豆腐を入れて煮立たせてのち、弱火で二、三〇分
煮る。「材料が柔らかく煮えたころ、味をもう一度見て仕上げるます。柔らかく煮込む
のがコツ。野菜あ"ハンダマ−"(水前寺菜)もよく、"チブル"(夕顔)、"シブイ"(冬瓜)
も使います。」とカナさん。
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☆イドツ(炒り豆腐)
鹿児島
@豆腐は水切りをしておく(マナ板の上に豆腐を置き、すだれを置き、その上から適当な
重しをかけるとよい)
A大根、人参、コンニャクは、薄切りにしておく。
Bキクラゲは水にもどし、線切りににしておく。
C油鍋を火にかけて熱くして、油をたらし、「豆腐は手でちぎって入れます。
豆腐がコロコロにになるほど炒めて、少し油を足し、大根、人参、コンニャク、キクラゲ
を入れて炒めます。全部を炒めたところで、砂糖、油、塩、うす口醤油で味つけして、
ちょっとさし水し、落しブタをして知るがなくなるまでトロ火で煮つめれば、
出来上がり。」と、石神千代乃さん(薩摩郷土料理研究家)。
イツドを、チャンプル−が薩摩の風土に適応したものと見る。Cまでの調理法は、
チャンプル−に瓜二つである。ただし、沖縄でアンダ−(油)といえばラ−ドをさす。
鹿児島で油といえば菜種油をさす場合が多い。
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☆菜めし田楽
○愛知県豊橋市きく宗。豊橋市が吉田の宿として栄えたころ、
田楽は吉田の宿の名物だった味噌は岡崎の八丁味噌。タレは、やや甘みのある
八丁味噌に砂糖と鰹節を加えゆっくりと馴れるまで煮込んでおく。
「豆腐はやや硬めにつくらせておく」とそのころまだ調理場に立っていた三代目、
太田宗一郎さん(68才、昭和三六年当時)味噌の薬味は、木の実、冬はユズ。
菜めしの"菜"は、大根の葉。七月から一二月までは、生葉を使う。
塩味をつけた大根葉は細かく刻み、炊き上がった飯と混ぜる。
冬場から六月までは、乾燥した葉を使う。
「香りは、千葉の方がよろしい。」と宗一郎さん。八丁味噌を使った田楽は、
ここだのもの。八丁味噌のタレに独特なコロイド性と、ちょっと、アクの強いような
香りと味とが、田楽に合い、その田楽が、不思議に塩味の菜飯によく似合う。
菜飯と田楽との組み合わせも、「きく宗」だけのもの。
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以上
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大豆の加工品を4つ言えるかな?
1.木綿豆腐と絹ごし豆腐の違いは何かな?
2.どうして豆腐は“腐った豆”と書くのかな?
3.“ニガリ”って何かな?
5.“冷奴(ひややっこ)”ってどんな意味かな?
6.“豆腐”は英語で何と言うかな?
* 回答は本書の中にあります。よく読んで探し
てみてください。